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チッパー君との日々

森に伐採された後の枝木がたくさん山積みにされていて、危険かつ見た目悪し…そこで、師匠に相談したところ、ウッドチッパーなるもので粉砕して撒くという方法があると教えていただいた。

福井県では、里山整備の機材を無料で貸し出すという親切な制度があり、私たちでも借りることができる。早速、電話で確認すると、2週間後には借りれるとのこと。

すぐに予約!

 

さて、軽トラで行けばよいとのこと。でも軽トラ運転はできない(ミッション車)ので、まささんに頼む。

はじめてのウッドチッパーとの対面。

「想像より大きい。」

操作説明。

「操作説明が聞こえなくなるくらいに、音が大きい。」

機械音痴にはすでに不安。

いろいろと思いはあるものの、森へ向けてしゅっぱーつ!(いつも軽い)

 

さて、稼働!と思いきや、いやはや

まず、ウッドチッパーを乗せた軽トラが、坂道途中で上がらない。

ウッドチッパーを下ろそうと思うが、スペースが無い。

何とかして軽トラから下ろしたウッドチッパーを、私が運転中、坂道途中で止まる。

止まったウッドチッパー(300キロ超)が自分に倒れてくると感じた私は「もう死ぬ。助けてー!」と叫ぶ。

軽トラを何とかして坂道下まで下ろそうとしていたまささんは、軽トラを脱輪。

叫びを聞いて助けに駆け上る。

ちっとも死にそうじゃない私がいる。(本人は、死にそうと思っている。)

 

恐るべし、ウッドチッパー。

 

森のことを何も知らない素人が、とりあえずやってみているとこんなことに。

 

さてさて、何とか動き始めたウッドチッパーは、かなり太い木もガシガシと粉砕してウッドチップを出してくれた。

開拓したばかりの赤土は滑りやすかったが、そこにチップを撒くととても歩きやすい。そして、良い香り、さらに森の景色が明るくなる、さらに、伐った木は時間をかけてまた森へと還っていく、といいことずくめ。

山積みだった枝木の山はどんどん無くなっていき、危険を回避し、見た目も美しくなった。

 

 

さあ、どんどんウッドトッパーを働かしていた私たちに、さらなる試練がやってきた。

「止まった…」

あれ?詰まってるかな、と何か所かあやしいところについていたものを取り除く。

「ん?」ちょっとチップの様子が違うような?違和感あり。

なのに、また働かしてみたら少し動く。

が、

「止まった...」

もう絶対動かないからね。という感じ。

 

このあたりから、ウッドチッパーに意思を感じ始めていた私。

 

よくよく見ると、チップではなく、糸状のかなり繊維質なものが回旋している歯のような個所にぎゅーっと詰まっていてもう動かない。

 

「これさえ取れば動くよね。」

そう、いつものように軽く考えていたが…

 

繊維質恐るべし。

 

この除去に何時間いや何日かかったことでしょう。

 

大きな口をあけられて、みんなにとっかえひっかえ口の中のものを引っ張られ、(なんだか歯医者さんみたい)

そんな姿を見ているうちに、ウッドチッパーは私に「チッパー君」と呼ばれるようになり、歯医者終わりに(まだ治療の途中)ビニールシートをかけられて、ひもで縛られて置いておかれる姿が愛おしく見えてきたのだった。

「ごめんね。また明日くるよ。」

 

そんな思いを抱かせながらも、数日で治療は無事終わり、さらに仕事をガシガシとしてチッパー君は、風のいろでの役目を果たしてくれたのだった。

 

森でのことは、人の思う通りにはいかないことだらけ。

坂道の勾配が少しきつかったから?通った道の土が柔らかかったから?昨日、雨が降ったから?湿気のせい?つる性のものが混じっていたからか?

もちろん、自分の無知により起こしてしまったところもあり、そこは反省して次に生かさなくてはならないのだけど。

 

自然を畏れ、自分の小ささを知り、仲間の偉大さを感じるチッパー君との日々だった。

(歯医者の治療は、素人がやってはいけません。極秘事項)

 

かおりん